STORY

9.かごの中の小さなサンクチュアリ

あとりえ菫
A Sanctuary in a Basket

自分だけの楽しみを、そっと味わえる時間を

「編みぐるみが安心して眠れる場所を作りたい」 その譲れないこだわりは、私自身の震災の経験から生まれたものでした。

どこにも安心できる場所がない。その震えが止まらないような恐ろしさを知っているからこそ、当時の私は「安心できる場所ごと、どこへでも移動できたらいいのに」と切望していました。 「かご」という小さな聖域(サンクチュアリ)は、あの頃の私が必要としていた暮らしの形なのかもしれません。

眠れない夜、枕元に置かれたかご。 その中では、お気に入りの服とブランケットを纏った「すみれうさぎ」が、あなたをそっと見つめています。 柔らかな体をなでて、「おやすみ」と声をかける。ただ「一緒にいる」と感じられるだけで、こわばっていた心は不思議なほどほどけていきます。

ときには、着せ替えを楽しみます。 「今日の気分は、これかな」とワードローブから選び、リネンのエプロンの紐をていねいに結ぶ。 おめかしを終えた子を見つめていると、不思議と自分自身の「心の準備」も整っていくような気がするのです。よし、今日も前を向こう、と。

この子を大切に扱い、きれいに整えてあげること。 それは、巡り巡って、後回しにしがちだった「自分自身」をていねいに慈しむことへとつながっていると信じています。

幼いころ、夢中でお人形の着せ替えをしていたあの時間。 私たちは無意識のうちに、自分を大切にする方法を、小さな友だちを通して学んでいたのかもしれません。

お部屋の一角に置かれた小さなかご。 そこは、誰にも邪魔されない、あなただけの心の安息所。 「すみれうさぎ」を慈しむひとときが、あなたの日常を支える静かな力になることを願っています。

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