STORY

1.はじまりの夜、ほどけた心

あとりえ菫
The Warmth in My Palm That Saved Me That Night

あの日、私を救ってくれた手のひらの温もり


私が「すみれうさぎ」を届けたいと願うようになったのは、ある夜の出来事がきっかけでした。

三十年前、一瞬にして家も、友人との関係もなくなってしまう経験をしました。それ以来、地震がとても怖くなりました。

二年前、住んでいる地域に大きな地震があったとき、恐怖で身体が震えました。
けれど、家族の前では平静を装いました。「心配をかけてはいけない」「私がしっかりしていなければ」……。母として、妻として、明るく振る舞おうとするほど、夜は眠れなくなっていきました。

そんなある夜のこと。
戸棚の奥に、何年も前に自分で編んだ、編みぐるみがいるのを見つけました。
ふと手にとると、こわばっていた心が、ふっとほどけるような感覚がありました。そのまま一緒に布団に入り、柔らかな毛糸の感触をなでていたら、いつの間にか眠りについていたのです。

私は普段、お人形を愛でるタイプではないので、とても驚きました。苦しかった私を救ってくれたのは、その「ちひさきもの」が持つ、静かな、でも確かな温もりでした。

「自分の弱さや辛さを、誰にも言えないでいる女性は、私以外にもたくさんいらっしゃるのかもしれない」

そんな方々に、そっとよりそい、一緒に悲しんでくれたり、眠ってくれたりする存在を届けたい。あとりえ菫の「すみれうさぎ」は、そんな祈りから生まれました。

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